海鵜と「離俗の生涯」

海鵜

 朝、NHKラジオの「ラジオあさいちばん」という番組から「ニュースアップ」で、「偽装社会」と題して、この一年を回顧する内田樹さんの話を聴いた。人びとが長期的な展望で、ものを考えていく、空間的、時間的にゆっくり、あわてないで・・・ということがなくなっている。じゃあ、どうすれば? とアナウンサーの問いに、こうなったのは日本人全員の責任だから絶句するとか、頭かかえて立ち止まって考えなきゃなりませんと答えていた。なんで、前へ行きゃなきゃならないのかとも。うーむ。なるほど。
 晴れて冷え込んでいる。風も強い。川を渡っていると川面(かわも)に水中から鳥が浮かび上がって来た。なんだろう。海鵜だ。姿を現すと、すぐに潜った。潜って、なかなか浮かび上がって来ない。しばらくして、十五メートルほど離れた水面へ首を出した。くちばしに何やらくわえている。白っぽいものだ。魚かな。くるっと向きを変えてまた潜った。
 夕方の南東の空には、上弦の月のなごりの半月が高く昇っていた。空が晴れ上がっているのだが、時折り雪の混じった風が吹く。
 安岡章太郎の『随筆集 風のすがた』から「離俗の生涯」を読む。蕪村の『蘇鉄図』、池大雅との競作『十便十宜帖』、『夜色楼台図』に触れられている。

随筆集 風のすがた