伊藤逸平の雑誌『VAN』の表紙のこと

八朔

 朝早く散歩。目指すは郵便局だ。年賀状を出しに出かけるのである。晴れている。雲ひとつない空。小高い所にある家に柑橘類の木が見える。見事なので近寄って真下から眺めた。八朔の果実のようだ。
 八朔(ハッサク)といえば、瀬戸田の宿で窓を開けると、一面が八朔畑ということがあった。ちょうど青森県弘前のリンゴ畑にリンゴが植えられているように。
 正午過ぎに川を渡っていると、川岸に渡り鳥の群れが上陸していた。ヒドリガモである。二十五羽ほどが水際の平らな岩場にうずくまっている。日向ぼっこをしているのかな。きれいな模様の雄が一羽だけ水面に浮かんでいた。
 夕方、書店へ寄る。店内で焼き芋を焼いている。いい匂いだ。焼き芋の焼き上がり時間を伝える店内放送がある。
 前から気になっていた宇田川悟の『VANストーリーズ――石津謙介とアイビーの時代』に目を通す。VANの名前の由来についての伊藤逸平さんとのエピソードの部分を注目してみた。著者は昭和二十一年に伊藤逸平の創刊した雑誌『VAN』の表紙を見て、雑誌『VAN』のタイトル文字の色と形が、創刊号が石津謙介のVANとそっくりなことを指摘している。なるほどね。
 今、手元にある森本哲郎の『世界の都市の物語8 ウィーン』に掲載されている綜合諷刺雑誌『VAN』の表紙は、白黒写真なので、色が分からない。分からないけれど、載っているVANのタイトルロゴは、一色でデザインされているように見える。
 雑誌『VAN』の発行元が銀座の交詢社ビルにあったという記述があるが、その前は歌舞伎座に近い三原橋付近の焼け残った小さなビルの中にあったのが、その後銀座の交詢社ビルへ移ったのである。(正確にいえば)。
 
 今日は大晦日(おおみそか)にしては暖かい日だった。
 夜は年越しそばをいただく。紅白歌合戦は、夏川りみ布施明の歌を聴いた。
 年越しクラシックとして、「生誕250年・モーツァルト・イヤー2006ハイライト」という番組を聴きながら今年も暮れる。眠くなってきた。ううむ。おやすみなさい。2006年。
 迎える年が良い年でありますように。