寒月や門なき寺の天高し

葉牡丹

 夕方、東北の空に満月が見られた。夜半に外に出てみると月は天頂に達している。煌煌と輝いているのだった。蕪村の句に、

寒月や門なき寺の天高し
月天心貧しき町を通りけり

 朝のNHKラジオの「ラジオあさいちばん」という番組で、「日本の針路」をめぐり、「引き裂かれる社会」と題して佐藤俊樹さんへのインタビューを聞く。木村知義アナウンサーが鋭く問いかける。
 日本の社会が今、「格差」をめぐってなにやら分かれ道に立っているように感じられるのですが、深刻な問題に思えるんですが・・・と佐藤俊樹さんへ問いかける。
 それに対して、「格差」社会をめぐってのアメリカの経済学者スティグリッツの考えを引用しながら、日本の社会の現状を語っていた。
 自分とは違った人に対する感度が鈍くなっているとか、今というのは横の人を見る状態であって、これから私たちの力で改善できる問題だと思います、とも。短い時間ながら興味深く聞く。
 森本哲郎の『ぼくの日本十六景』から「越後の山里」を読んだ。
 クリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を観たが、その硫黄島の戦いの頃の森本哲郎さんの体験が書かれている。軍需工場で零戦や銀河といった戦闘機や爆撃機の組み立てをやらせられていたという。
 その中に「多田道太郎君」のエピソードが出てくるので、ちょっと吃驚した。
 このエピソードは『物くさ太郎の空想力』で、多田道太郎氏が書いていた森本哲郎さんのエピソードと裏と表のような関係になるかな。うーむ。面白い。
ぼくの日本十六景―空の名残り