八朔と金星と墓碑銘のこと

八朔

 通りすがりに柑橘類に出くわした。大きな実のなった八朔の大木が、住宅の庭から道路へ張り出している。八朔は直径一〇センチくらいである。見上げると大粒の実で鈴なりであった。
 夕方、晴れた西の空に明るく輝く金星あり。
 夜、NHKテレビの番組「迷宮美術館」を観る。「笑わせていただきます!」と題して、漫画の原点という「鳥獣戯画」までさかのぼって、その笑いの秘密を分析していて面白かった。会田誠も出演していて、彼の絵の興味深い話も聴けた。
 今週の『週刊新潮』で「人間自身」最終回の池田晶子さんの文章を読んだ。うーむ。これは、読者への最後のメッセージとでもいえるかな。謎の言葉を残されて星になられた。
 《本誌には墓碑銘と題された名物コーナーがある。》と始まる文で、池田晶子さんは思いをめぐらす。その墓碑銘に触れて、

一生涯存在の謎を追い求め、表現しようともがいた物書きである。ならこんなのはどうだろう。「さて死んだのは誰なのか」。