阿川弘之の『あくび指南書』

白モクレン

 寒の戻りで寒さにやられたのか、風邪気味だ。くしゃみをする。
 街路樹の白モクレンを眺めていると、そばに枝垂れヤナギが枝を垂らしている。まだ芽は出ていないが、もうすぐだろう。
 地味な古本屋で、店頭の棚を見た後店内へ。店内の文庫は一冊一五〇円と表示がある。三冊で三百円になります、と書かれている。うーむ。三冊になるように本を探す。
 阿川弘之の『あくび指南書』1985年(講談社文庫)を見つける。毎日新聞に連載していた時、愛読していた。「あとがき」を読むと、この随筆集の名づけ親は江國滋宗匠であるという。

六年前、連載の約束をする際、一篇一篇に古典落語の題名を借りてみようということは、自分で早々と考えついたが、全体のタイトルがなかなか決らなかった。宗匠に相談したら、ご親切にも思案長考の末、「あくび指南」のあとへ「書」の一字を加えてはと助言してくれた。幸い江國宗匠また、現在のところ健在かつすこぶる健筆である。どのくらい健筆か、「解説に代えて」をごらんになると分る。ただし、読者がこれはくしゃみの指南書かと驚かれるかも知れないけれど。

 あと二冊は、蕪村関連で、芳賀徹の『與謝蕪村の小さな世界』1988年(中公文庫)。
 森本哲郎編の『驚異の世界史 古代地中海 血ぬられた神話』1988年(文春文庫ビジュアル版)。