福田平八郎の絵

 NHK教育テレビの「新日曜美術館」で、藤原正彦の語る福田平八郎の絵の魅力をめぐる番組を観た。作品は「雪」、「漣(さざなみ)」、「竹」、「鮎」、「初雪」、「雨」などに触れていた。もう一つ蛤の絵もあった。絵の構図が部分を切り取って、全体を暗示させる。デザイン画のようなシンプルな作品。
 そういった福田平八郎の絵についての藤原さんの話が面白かった。岡潔の数学論も引用しながら、俳句と和歌の違いを絵と音楽の違いにたとえながら話していた。「漣」という作品は、ある一瞬の波を切り取って永遠化させる。銀と青の二色で・・・。
 司会の檀ふみさんが「漣」の絵は着物の柄を連想させると言っていた場面があったが、うーん、なるほど着物の柄に見えるなあ。そう言いながら和やかな気持ちになる作品でもある。「初雪」は、梅だろうか雪が積もっている絵。デザイン画のようなシンプルさだが、微妙なみずみずしさがある。水面が宝石のようにきらめく一瞬をとらえた「漣」は福田の趣味の釣りから生れた。福田はスケッチから、ハガキで作った枠で、その絶妙な構図を求めた。技巧よりもみずみずしいものを求めた。
 「雨」という作品は屋根の瓦を描いている。よく見ると、瓦に雨が降っている。瓦に時間を描いているのだ。目を凝らすと瓦に降った雨で時間を絵に表している。
 福田平八郎の絵には一瞬と永遠、一部と全体、いろんなものを暗示し、乾いたドライな叙情がある。自然と人間、自然に対する暖かい気持ちを、身の回りのものを描いて気づかせてくれる。