飛び跳ねる数学者!

山吹

 絵具に山吹色と呼ぶ色がある。山吹色といえば、大判・小判の金貨の色を指す言葉である。『大辞泉』の巻末のカラーチャートの「黄系の色」のところを眺めていると、色々な黄色い種類の色見本がある。その微妙な色の違いと名前とを興味深く見比べた。
 鬱金色(うこんいろ)、梔子色(くちなしいろ)、このあたりの色はとても似た色の仲間である。
 その黄系の黄金の色をした山吹が咲いていた。緑の葉に映えて鮮やかである。蕪村の句に、「山吹のうの花の後や花いばら」。
 安永四年(1775年)四月十二日の句である。
 フランスのラスコーの洞窟の壁画をめぐって、中原佑介編著『ヒトはなぜ絵を描くのか』という本で、中沢新一中原佑介の対談があった。それは、旧石器時代の人類が生み出した原初の芸術の痕跡の意味を探ろうとしているのだった。その中沢新一の『芸術人類学』*1みすず書房)から、「芸術人類学とはなにか」と「芸術人類学への道」を読んで見た。講演や講義を文章にしたものらしく、文章も短いので読みやすい。後者に数学者の岡潔のすてきな写真がある。うーむ。飛び跳ねる数学者!

 いきなり私の後に映し出されたこのすてきな写真の説明から、今日の話をはじめることにしましょう。空中に飛び上がっているのは、岡潔という数学者で、それをびっくりして見上げているのが、名前は知りませんが、和歌山の小さな村に住んでいた岡さんの近所の家の犬です。  「芸術人類学への道」 27ページ

 私もこの犬になって、飛び跳ねる数学者を見上げている気になる写真である。