映画『サン・ジャックへの道』のこと

ハスの葉

 雨のあがった公園の池に寄り道する。ハスの葉に丸く水銀のような水滴が残っていた。葉が伸びて密集しているので、水面が見えない所もあった。
 映画館へ行く前に、老舗書店に寄り『図書』2007年7月号をもらう。
 サロンシネマ1で、『サン・ジャックへの道』を観た。上映三日目の最終上映時間で、観客は十人ほど。監督はコリーヌ・セロー
 母が亡くなって残された遺産の相続条件は、フランスのル・ピュイからスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステラまで1500kmの巡礼道を、巡礼者として兄弟三人が一緒に歩くこと。会社を経営している兄、夫が失業中で二人の子供のいる高校教師の姉(クララ)、酒におぼれて家族と別れて暮らしている一文無しの弟、この三人が遺産をねらって、巡礼ツアーに参加する。兄弟三人は仲が悪い。取っ組み合いの喧嘩も旅の途中でするが・・・。
 ツアーは八人で、ガイドのギイに率いられて九人で山を越え、谷を下り、野を歩き、一日中歩きつづけて宿にたどり着く。来る日も来る日も・・・。
 人生が長い旅のようなもの、自然という舞台で泣いたり笑ったり。歌ったり、飲んだり食ったり、眠ったりと・・・。
 一文無しの弟(クロード)が、身一つのひとで手ぶらの中年男。一方、会社経営の兄(ピエール)は荷物を一杯背負って来て、軽くするため旅の途中で捨ててゆく。人生に必要なものは何か。教えられるものがあるような気がした。