大仏のあなた宮様せみの声

ハス

 昨日の夕方、久しぶりに西の空に月と金星が見えた。
 三日月と金星が接近して輝いている。イスラム諸国の国旗に見られる月と星のデザインに似ている感じがする。高度は、金星がやや下がって来ていて、二〇度ほど。
 それにしても、空が澄み切っているからか、金星がものすごく明るい。
 南東の空に目を転じると、木星が黄金色に輝いていた。
 高度は三〇度ほどである。これで、雲がすっかりなくなり晴れ上がっていれば、夏の大三角形が見られることだろう。
 今日、クマゼミの鳴き声を聞く。今年初めてだ。まだ、鳴き声は小さいし、長くは続かない。
 安永四年五月二十一日の蕪村の句に、

大仏のあなた宮様せみの声

 出久根達郎の『作家の値段』(講談社)を読んだ。あとがきにもあるように、「古本屋の作家論」である。筆者も言うように、「普通の読み方ではない。著者に売価を付けるための読み方である。」
 そして、利益がからんだ文学論であるわけで、本をめぐるエピソードなど面白かった。
 寺山修司の『田園に死す』という歌集をめぐって、《私も好きな歌集だが、これを素材に制作した映画(寺山の脚本・監督)も傑作だと思う。》(86頁)とある。
 そういえば、先日観たコリーヌ・セロー監督の映画『サン・ジャックへの道』に、寺山の『田園に死す』を思い出させる夢のシーンがあったなぁ。と、ふと思った。