これは、事件だ。中村宏「図画事件1953−2007」

アブラゼミ

 朝から蝉が鳴きだす。蕪村の句に、

半日の閑(かん)を榎(えのき)やせみの声

 明和三年六月二日の句である。
 中村宏の「図画事件1953‐2007」の展覧会チラシが、知人から届く。ありがとう。
 名古屋市美術館で開催中。七月二十一日〜九月十七日まで。
 案内のチラシによると、五日に美術館で、中原佑介氏と記念対談があったんだね。聴いて見たかったなぁ。
 《また、絵画の仕事とともに、装丁や挿画などのイラストレーションの分野でも活動を展開しています。とくに1960年代から1970年代に印刷を媒体とした紙の上の仕事は、多彩な書籍、雑誌、新聞などで発表され、多くの読者に鮮烈な印象を与えました。》(チラシより)
 松岡正剛の編集していた「ハイスクールライフ」に掲載されていた中村宏のイラストレーションは鮮烈な印象だった。
 稲垣足穂中村宏の対談が本になったときに、銅製の「本」が二種類作られている。そのうち、重くてページを繰ることができない「本」がある。
 どちらも重い本だが、すべて銅製の本の方は、二十三キログラムもあるのだ。
 うーむ。ページを繰れない読めない、持ち運びの出来ない本といえようか。
 中川素子・坂本満編『ブック・アートの世界』(水声社)で、坂本満氏が、その辺の事情を書いている。

ブック・アートの世界―絵本からインスタレーションまで

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