『夜中の乾杯』を木陰で

アブラゼミ

 昨夜も熱帯夜。明け方は涼しくなるが、日中、気温がぐんぐん上がり、三十五度を越えた。
 日中は空の青さが濃い。なんとなく秋を感じさせる空だ。
 街路樹のクスノキケヤキからアブラゼミの鳴き声が聞こえて来る。木陰のベンチで、携行していた飲料を飲む。おーいお茶の蝉しぐれかな。
 書店で、『新刊展望』八月号をもらったので、ぱらぱらめくる。飲料のお茶をぐびぐび飲む。長田弘伊勢英子の対談「旅と、絵と、ことばと。」が面白かった。涼しくなる。
 古本市場で、丸谷才一の『夜中の乾杯』(文春文庫)を買う。一〇五円。解説は嵐山光三郎。嵐山さんの解説が興味深い。いいね。丸谷さんの教え子のひとりが嵐山さんだったという話。
 この話は、四方田犬彦の『先生とわたし』に倣って言えば、いわば嵐山版「先生とわたし」といえなくもないかな。ただし、酒乱の人物は登場しない。お茶やコーヒーが好きそうな人物ばかり。たぶん。
 《丸谷さんのエッセイは、濃くて甘くて爽やかで硬くてやわらかいが、その話を肴にして夜中に乾杯すれば、ぱちんとはぜて七色の虹となる。》(265ページ)