染あへぬ尾のゆかしさよ赤蜻蛉

ナツアカネ

 朝晩の吹く風が涼しくなった。夜明けの空を見上げると、なにやら黒いものが飛んでいる。何匹かのコウモリだ。夜と朝のはざまに飛びまわっているのだった。
 九月八日は、二十四節気のひとつ白露である。秋分の十五日前で、この頃から秋らしくなると。蕪村の句に、

染あへぬ尾のゆかしさよ赤蜻蛉(あかとんぼ)

 ロイス・エイラトの『あかいはっぱ きいろいはっぱ』の訳者でもある、阿部日奈子の詩集『海曜日の女たち』(書肆山田)を読んだ。
 散文だけを読んでいては、世界は広がらないような気がする。
 ローベルト・ムシル(ムージル)の『特性のない男』の登場人物クラリッセをヒロインに構想された、四場のバレエ台本。これが、面白かった。
 「キンダーガルテンの孤独」、「未来はオーレンカのもの」、「Y 吉岡実に」、「酷薄/inframince」、「黄金週間」、「海辺のコント」、「あるババアの肖像」などの詩も・・・。