堀文子『花のスケッチ帳』

ナツメ

 彼岸が過ぎても、残暑がきびしい。今日も、気温が三十三度あった。
 街路樹のナツメの木は、熟して赤くなった実をつけている。見事な光景だ。鳥が盛んに食べにやって来ている。
 ナツメの花は小さな花弁で(二、三ミリ)、黄緑色をしている時期がある。実は食べるとリンゴのような食感だ。
 『花のスケッチ帳』(JTBパブリッシング)を眺める。先日のNHKの「新日曜美術館」は、堀文子さんが出演していて、ヒマラヤへブルーポピーを見に出かけて、5000メートルの岩場に咲いているのをスケッチするのを見たのだが、そのときのスケッチも載っている堀文子さんの本だ。
 牡丹、椿、菖蒲、菊、木蓮、桔梗、藤、野の花々、葉、ブルーポピーのスケッチと短い文で構成された本。
 堀文子さんの文に、

私は近ごろ、
生まれては滅びるこの世の定めを花の中に見るにつけ、
同じ生命の輪の中にいる自分を感じるようになった。
そして花たちとの隔てが次第に消え、
仲間との暮らしといった心境になってきた。
だから、私の心の底に溜まる花の数はふえる一方で、
数えきれないほどになった。
  『花のスケッチ帳』117ページ

花のスケッチ帳