堀文子の『命といふもの』のこと

命といふもの

 『中央公論』2007年11月号で、山田真哉の「街の本屋はなぜ潰れてしまうのか?」と題した文を読む。
 出版業界をどう見ていますか。という問いに対して、次のように答えていた。《ネットの普及などを直接の原因として、時代の流れが変わりました。今は、基本的に「モノは要らない」という時代なんですね。「モノ」は邪魔で、「情報」だけを欲しがる。》
 《私はあらゆる企業行動を「効率化」か「リスク分散」かに分けて考えるようにしているのですが、出版点数の増加は、出版社も書店も「リスク分散」の方向に流れていることの表れだと思っています。》
 《書店の大型化というのは「リスク分散」の意味合いが強いわけです。》
 《街の中小書店はこれらのリスク分散ができていませんから、潰れる可能性も高く、実際に潰れているんです。》
 終わりに、やるとしたらどんな書店をやりますか、という問いに、《やるとしたらネット書店をやるでしょう。原価率の高さと万引のリスクを考えると、リアル書店にわざわざ新規参入をするメリットは少ない。》

 青い罌粟(けし)、ブルーポピーを求めて八十一歳の時にヒマラヤへ旅した堀文子の画文集『命といふもの』(小学館)を見る。毎月二回、雑誌『サライ』に2004年から2007年の三年間に連載で掲載した絵と文章を、加筆、再構成したものである。
堀文子画文集 命といふもの (サライ・ブックス)