荻上直子の『バーバー吉野』を観る

ザクロ

 街路樹のザクロの木に実が生っていた。味覚の秋である。
 夕方の晴れた南西の空に、上弦の月が高く昇っていた。
 橋の上を、海鵜が長い首を伸ばして海の方へ飛んで行く。
 蕪村の句に、「鳥さしの西へ過けり秋のくれ」。
 天明二年の句である。
 「PFFアワード&スカラシップ・セレクション」を、映像文化ライブラリーで18日から21日まで上映している。二日目の上映作品から、荻上直子脚本・監督の映画『バーバー吉野』を観た。観客は二十五人ほど。
 先月、荻上直子の映画『めがね』を観たばかりなので、この『バーバー吉野』は、どんな映画か関心があったのだ。
 この映画は、2003年のスカラシップ作品。上映時間96分。
 パンフレットに、

“町の男の子が全員同じ髪型をしている”そんな田舎町を舞台に、子どもたちばかりでなく大人たちも成長していく様を描いたコメディタッチの物語。浪花屋の缶入りの柿の種、寄せ集めのダンボールでつくった“秘密基地”、タイル張りの風呂、森、お祭り、床屋。設定は現代にもかかわらず、そういった細かいディティールが、小学生のリアルな日常を描き出し、妙に懐かしい気持ちを起こさせてくれる。

 映画を観終わった後、「ハーレルヤ、ハレルヤ」と口ずさんでいる自分に驚く。バーバー吉野という床屋のおばちゃんにもたいまさこが出演している。
 吉野ガリという髪型を全員がしているという可笑しさ。東京からの転校生が来て、髪型をめぐって町は大騒ぎになってゆく。
 可笑しくて笑う場面が何度もあった。
 この映画は、荻上直子監督の長編第一作。そのあとに、『恋は五・七・五!』、『かもめ食堂』、『めがね』と上映されてきた。