夜の蘭香にかくれてや花白し

広島菜

 昨日、冬野菜で白菜と広島菜の苗を購入する。店でおまけにと言って水菜の苗を下さった。
 ありがとう。この野菜の苗も植える。
 丸山眞男『回顧談 上』(岩波書店)を読みつづける。
 午後、ホームセンターへ出かけたときに、丸山眞男が転属していた陸軍船舶司令部参謀部のあった所へ寄り道する。建物はなくなっていて、テニスコートが中央にある公園だった。南東の角に、「旧蹟 陸軍運輸部 船舶司令部」という石碑があり、石碑の前に大きな鉄の錨が置かれているのだった。

今でも覚えているけれど、敗戦の年の三月三一日、暗号教育卒業の最後の点呼の時に転属が知らされる。ぼくは最初に招集された朝鮮で病院に入ったりしたものだから二等兵時代が長かった。朝鮮のときに二等兵で、広島へ行ってもまだ二等兵です。「丸山二等兵、参謀部情報班に転属を命ず」と読み上げられるのです。ぼくは何のことだかよくわからなかったけれど、参謀部情報班に転属になった。情報班長が広中中尉といって、山口商高を出た応召将校です。これはいい人でした。朝鮮と違って、広島ではビンタを受けたり、そういうことは全然なかった。  1〜2ページ

 うーむ。福岡の西部軍司令部に転属して勤務していた人から聞いていた司令部での話に近い印象があるなぁ。
 26日が満月で地球へ35億6752キロメートルまで最接近しているという。今宵、夜半に外が明るいので出てみると、月が南の天頂付近に輝いている。月の光に手をかざすと地面に影ができるのだった。
 蕪村の句に、「月天心貧しき町を通りけり」。明和五年の句。
 夜の闇に、うっすら白い蘭の花と香りが漂ってくるような句に、
夜の蘭香にかくれてや花白し」。安永六年の句である。
丸山眞男回顧談〈上〉