池澤夏樹の『虹の彼方に』

 池澤夏樹の新刊『虹の彼方に』(講談社)を読んだ。二〇〇〇年の春から二〇〇六年の末までの間、雑誌『現代』の巻頭に筆者の書いたコラムを主に、その他の新聞や雑誌に書いた文章をまとめたものである。
 「本を消費する国」と「バベルを復興する営み」の二編に納得するところあり。《図書館さえ次々に古い本を処分してしまう。》(121ページ)
 先日、図書館で古い本のリサイクルフェアで入手した本に、池澤夏樹の『沖にむかって泳ぐ』1994年(文藝春秋)があった。副題に「池澤夏樹ロング・インタビュー」。『読書癖』をはじめとして、池澤さんの本読み術が語られていて面白い。
 池澤夏樹=個人編集「世界文学全集」が河出書房新社から発行され始めた。今月(11月)は、第1巻ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード青山南・訳。
 オン・ザ・ロードといえば、宮本常一という人も「オン・ザ・ロード」の人であった。旅する人。

 Somewhere over the rainbow , skies are blue・・・・・虹の彼方には青い空があるけれど、ぼくたちの周囲には強風が吹き荒れている。その風に翻弄されながら、自分の考えという杭(くい)になんとかしがみついて書いたのがこれらのコラムである。この数年間の世界と日本の激動を思い出しながら読んでいただきたい。  『虹の彼方に』3ページ