十一月二十三日は、二十四節気のひとつ小雪である。立冬と大雪のあいだで、小雪というのだろう。
快晴で通りの街路樹に桑の大木がある。ちょうど目にも鮮やかな黄色の葉だ。大きな葉も見られる。マウスパッドほどのサイズだ。
蕪村の句に、「このもよりかのも色こき紅葉(もみじ)哉」。
夕方、東北東の空に高く月が昇っていた。丸い月で、明日は満月だろう。
高山宏の本を読む。
『超人 高山宏のつくりかた』(NTT出版)。自伝的な文であり、四方田犬彦の『先生とわたし』に対して、高山宏からみた由良君美評伝もある。
高山宏の出発点に、高橋康也の『エクスタシーの系譜』があり、その延長線上の高橋康也の『ノンセンス大全』(晶文社)があるようだ。その高橋康也との御縁結ぶきっかけ話に注目した。高橋康也の授業を聴いて、
途方もなく広汎の話柄だった授業は、授業の何かに引っ掛っているのなら何でも良い、十枚前後のレポートを出せということで終った。ぼくは本格的にやり始めていたメルヴィルと、ぼくの思うアメリカン・マニエリスムのことを『アリス』物語の片言隻句に引っ掛けて百二〜三十枚、一日で書きあげた。熱に浮かされたようにこれだけの集中力で頭使ってものを書いたのは後にも先にもこの時をおいてない。二十歳と思えぬ博識と癖の強い文章にひかされて読まされてしまった、と先生がどこかにお書きになっていて、まあそれが先生との御縁結ぶきっかけである。
高橋氏からそういう話を聞いているといって、同僚の多田幸蔵先生から、旺文社文庫に二つの『アリス』を訳したのだが、ついては若手に解題をお願いしようと思っていて丁度良い、君に頼もう、というお話があった。それで書いたのが後に「流れのある風景」と題が付いて、『アリス狩り』(青土社)の冒頭を飾った長文伝記百枚である。ぼくがもらった稿料はこれが初めて、もの書きとしてのぼくの最初の文章であり、今もの書きとしてひょっとして終りという作がもう一度『アリスに驚け』(青土社)だというのも、円環に始った哀れな文業の描く末期の円環かもしれない。元へ戻ったのか。 104〜105ページ
そうすると、9月16日に老舗古書店で買ったルイス・キャロル『不思議の国のアリス』1975年初版、多田幸蔵訳(旺文社文庫)にある高山宏の解説は、上記の経緯で書かれたものなんだね。
この旺文社文庫の解説は20ページもある。高山宏による年譜もあって、これが5ページある。
ブックオフの新しい店で、二冊購入。
坂下昇『アメリカン・スピリット』1981年(講談社現代新書)
文藝春秋編『戦後世代が選ぶ洋画ベスト100』1999年(文春文庫)