モダン・ジャズ・クヮルテットの『たそがれのヴェニス』

白菜

 一日中曇りで、霧雨が思い出したように降る日だった。冬野菜の白菜にしっとり湿り気が舞い降りている。
 高山宏の『超人 高山宏のつくりかた』を読んでいると、思いがけない詩人が登場していて、おっと驚く。ロイス・エイラトの『あかいはっぱ きいろいはっぱ』の訳者・阿部日奈子さんで、絵本を読んだばかりだったのだ。うーむ。「22 幻想言海」という章で、詩人になりたいと思ったことがあった高山さんが、「書きためた詩の一部は詩人の阿部日奈子さんに持ってもらっている。若書きの詩手帖の一冊は平石貴樹さんにさしあげた。」(164ページ)。
 坪内祐三の『四百字十一枚』のあとがきに、「私はもともと余談好きの男だ」とあるが、高山さんのこの本も余談が楽しい。
 モダン・ジャズ・クヮルテットの『たそがれのヴェニス』を聴く。荻上直子の映画『めがね』に「たそがれる」という言葉がセリフにあったのだが、霧雨の日にはこの曲に「たそがれる」のである。