岩本素白とN君(野尻抱影)?

水仙

 水仙の球根から芽が出て来た。

ヒガンバナ科多年草。早春に、鱗茎(りんけい)から一本の花茎を出し、白や黄色で中央に副花冠をもつ花を横向きにつける。葉は根生し、平たい線形。耐寒性で栽培に適し、観賞用とする。らっぱ・口紅・房咲き・八重咲きスイセンなどの品種がある。主に地中海沿岸地方の原産。本州以西の海岸に自生するものは、野生化したものといわれる。  『大辞泉

 『大辞泉』の「水仙」の引用句も蕪村の句で、「水仙や寒き都のこゝかしこ」。安永六年十月の句である。
 夕方、老舗書店へ寄る。ウェッジ文庫を探す。店の人に聞くと置いていないらしい。大型書店で探す。新刊の文庫の平台で見つける。
 ウェッジ文庫が二冊並んでいて、もう一冊は久保博司『日本人は何のために働くのか』。
 来嶋靖生・編『東海道品川宿――岩本素白随筆集』(ウェッジ文庫)を買う。帰りの電車が空いていたので、書店の袋から取り出して「素白夜話」を読む。一読、冒頭の文にユーモアあり。思わず笑う。

 大分久しい以前のことであるが、或る時親しいN君が笑いながら、近頃うちへ来ている女中は面白い女で、客が帰ると茶道具など片附けながら、きまって、「旦那さま、今のお客は士族さんですか平民ですか――」と云って聞くのだと云う。私も可笑しくなって、「今どき珍しいね、それじゃ今度僕が行った時には、華族さまだと云っておいてくれ給え。」そう云って二人で哄笑した。然し無精者の私が訪ねて行かないうちに、その女中は帰ってしまったとのことであった。郷国は忘れたが何でも山陰地方の田舎だったような気がする。  161ページ

 ところで、文中にある「N君」とは誰だろうか? もしかすると、「N君」とは野尻抱影ではないかしら。うーむ。そんな気がするんだが・・・。

東海道品川宿―岩本素白随筆集 (ウェッジ文庫)

東海道品川宿―岩本素白随筆集 (ウェッジ文庫)