牙寒き梁の月の鼠かな

 霙(みぞれ)が降ったり止んだりで、底冷えのする寒の一日であった。 蕪村の句に、「牙(きば)寒き梁(うつばり)の月の鼠かな」。*1安永七年の句である。
 マーリオ・リゴーニ・ステルンの『野生の樹木園』志村啓子訳(みすず書房)を読み始める。
 「一九九六年版によせて」に、

 私たちは樹木についていかに多くのことを、いまだ知らずにいることか。そして進歩の名のもとに、いかにその多くを失ってきたことか。私たちの祖先は本能として、あるいは信仰心から、より直接的に、同時により親しみと敬意をもって、樹木たちと付き合っていた。人びとが自然のただなかで生きていた時代、木は地が天と、天が地と交信する、その仲介者であった。  9〜10ページ

 
 
 

*1:脚注に、月の鼠―諺。月日の早く移り変わるはかなさをいう。