荒川洋治さんの「読書で豊かに」を聴く

白菜に雪

 昨夜の牡丹雪が、今朝積もっていた。晴れて陽射しが強く、じきに消える。
 夜半の凍りつくような晴れた夜空に北斗七星を眺める。 
 ラジオ深夜便で「読書で豊かに」を聴く。今月のゲストは荒川洋治さんである。五年近く出演していたという荒川さんだが、今回でゲストとしては最後になるそうだ。
 今月の紹介本は四冊。一冊目は、尾崎翠(おさきみどり)の本で『ちくま日本文学 尾崎翠 』(ちくま文庫)である。名前の尾崎は、おざきではなく、おさきと読むそうだ。
 二冊目は『石上玄一郎小説作品集成 第一巻』*1出版元は未知谷から。黒い表紙の本。太宰治と旧制弘前高校で同級生だった人で、太宰にかなり影響を与えた人という。作風にまとまりのない作家とも。しかし、全集で読むと面白い作家。ひとつひとつにしっかり書かれている。
 三冊目は、北村太郎の『光が射してくる』(港の人)。「未刊行詩とエッセイ 1946―1992」でまだ本になっていない文章をまとめたもので、16年前に亡くなった詩人である。540ページ近くあるエッセイ集。
 「後半部300ページをしめる読書案内、アルバイトの仕事でしょうか。」と荒川さんが言う。子供(ジュニア)たちのために書かれた三冊といった形式での読書案内。50年前の読書界の様子が分かる。語り言葉で書かれている。258ページ、「読書によって、心の広くなる人は実はまれだ。」といった北村太郎の言葉をめぐっての談話あり。この読書案内は二十代後半の北村太郎の文章で、やわらかな言葉でとても貴重な本だと言う。
 そして、付け加えて「今の二十代後半の人が、こんな文が書けるだろうか。」と話されていた。版元が「港の人」という初耳の版元である。
 四冊目は岩波文庫から、クライストの『ミヒャエル・コールハースの運命―或る古記録より』(吉田次郎訳)。ドイツ文学の傑作とも。ゲーテと同時代人で34歳の時、湖畔である女性と自殺をした人で、太宰治が好きだった作家。といったお話を興味深く聞いた。これから荒川洋治さんの「読書で豊かに」が聴けなくなるとは残念だ。うーむ。つづけて欲しいですね。
 来月の「読書で豊かに」のゲストは小池昌代さんだそうです。