もったいない

ヒドリガモ

 川を渡っていると川面に渡り鳥を見る。久しぶりのヒドリガモである。岸辺に近い水面に群れが散開している。モーターボートが波をつくりながら走って来た。その巻き起こす波が群れのいる水面にやって来ると、驚いたかのように、鳥たちは舞い上がり遠くへ去って行った。
 その静から動への一瞬。危機を感じとった群れの動き、慌てふためいた群れが体制を整えて飛び上がる動きが見事だ。
 夕方、ブックオフの新しい店で見た光景。一〇五円棚に「世界文学全集」が棚にずらりとならべられている。全45巻。手にとって見ると、箱入りで読みやすい9ポ二段組の本文。作家年表つき。注文カードが挟まったまま。全然読まれた形跡のない新刊並みの本だった。
 亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』が、光文社の古典新訳文庫で話題になっているが、これは江川卓訳である。もったいないようなので買っておく。
 『愛蔵版 世界文学全集19 カラマーゾフの兄弟』1976年第3刷(集英社)。