遠くの山並みがくっきり眺められる。快晴で風はまだ肌寒いが、街路樹の桜の枝の先につぼみが、ほんのり紅色を帯びてきた。もうすぐ開花かな。
蕪村の句に、「さくら一木(ひとき)春に背(そむ)けるけはひかな」。安永四年二月十日の句。
マンボウこと北杜夫の『マンボウ周遊券』1976年(新潮社)から「マダガスカル紀行」を読んだ。
マダガスカルの鉄道に阿川弘之との二人で乗ったときの話である。その奇妙なエピソードが面白い。
阿川弘之にも『南蛮阿房列車』に「マダガスカル阿房列車」という紀行があるので、再読する。うーん。ユーモアのセンスいいね。名文ですね。落語みたいだ。
読み比べてみたが、両者の話が食い違っていないので驚きを持つ。
もう一篇、阿川の「キリマンジャロの獅子」も北杜夫の「マダカスカル紀行」と合わせて読むと、より愉しみが増す気がする。
『マンボウ周遊券』は、表紙カバー絵・装丁・カットが谷内六郎。谷内六郎の五十代の絵である。うーむ。帯に「大海原をたゆたうマンボウのように、あわただしい街の生活を離れて、のんびり愉快な世界の旅に出よう!」とある。