小津安二郎監督『長屋紳士録』(1947年、71分、白黒)を映像文化ライブラリーで観た。観客は30人ほど。昭和22年4月完成。名作映画「笠智衆特集」の一本。
東京の下町の長屋に父親とはぐれた少年を、易者の笠智衆が連れて帰る。 長屋の住人が、やっかいものとして、その坊やを誰も引き取らないが、くじ引きで決めることになる。(このくじ引きはインチキなのだが)一番子どもを嫌っていた一人暮らしの飯田蝶子のおたねさんに、くじが当たる。
坊やの父が茅ヶ崎からやって来たというので、おたねさんは坊やを連れて茅ヶ崎まで行く。
だが、父親の消息は分からず、海岸の砂浜で二人しておむすびを食べる。このおむすびを食べるシーンがしみじみいいね。
そのあと、坊やをだまして見捨てて、おたねさんは逃げようと走る。走る。
それに気づいた坊やが、追いかけてくる。このシーンは忘れられない。(まるで、バスター・キートンみたいだ)
再び、長屋へ戻ってくる。おたねさんは次第に坊やに情が湧いてきて世話をしていこうと思い始めたところに、坊やの父親が来訪するのだった。
おたねさんの幼友達のきく(吉川満子)が、やって来た時の会話は聞いていると可笑しい。きくの言葉づかいは、粋な感じがする。
おたね「あんた子どもいらない? うち困ってんのよ」
きく「いらないわよ。ゴムホースだったらいるけどさ」