春原政久監督の『三等重役』

アオモンイトトンボ

 七月一日は半夏生(はんげしょう)だった。例年、二日ごろだが、今年は一日?

 雑節の一。太陽が黄経一〇〇度にある日で、夏至から一一日目。七月二日ごろにあたる。このころから梅雨が明け、田にカラスビシャク(半夏)が生えるのを目安に田植えの終期とされてきた。 『大辞泉

 
 夕方公園の池に寄り道する。先日見かけたクロイトトンボが、ハスの葉の上を飛び回っている。ハスに止まった一匹を眺める。
 細くて三センチほどのトンボだ。胴の先が青い宝石のような色をしている。

 4日から始まった名作映画「小林桂樹特集」で春原政久(すのはらまさひさ)監督の『三等重役』(1952年、東宝、98分、白黒)を映像文化ライブラリーで観る。観客は30人ほど。
 7月は「小林桂樹特集」の開催である。
 源氏鶏太の同名小説を映画化したもの。人口10万人の黒潮に洗われる地方都市で有力な会社の社長桑原氏は三等社長である。
 桑原氏は前社長が敗戦後の公職追放で退いたあとに、社員から昇格して社長になっている。
 この社長を河村黎吉(れいきち)の主演で、社内の人間模様をコミカルに描いている。社長夫人(沢村貞子)が新しく買ったばかりの着物を着て仲人をしたいばかりに、社員同士の結婚を奨励するお達しを出したりする。それで一組結婚式を挙げる。
 社長と森繁久彌が演じる浦島人事課長との二人三脚ぶりが愉しい。浦島夫人を千石規子(せんごくのりこ)、小林桂樹は秘書課の青木を演じている。
 社長が浦島人事課長と二人で東京の出張所へ出かけた際に、妻を亡くして独身の田口出張所長とお好み焼き屋の道子(越路吹雪)との仲人を買って出る。このシーンは印象的。河村黎吉といえば、先日観た小津安二郎の『長屋紳士録』に、飯田蝶子の長屋の隣人で脇役で出ていた。
 主演の河村黎吉と森繁久彌との絶妙な演技を愉しんだ。