「隠し砦の三悪人」

睡蓮とカエル

 夕方、公園の池で睡蓮の葉に、小さなカエルがいた。鳴き声もせず、あたりはセミの声がするばかりである。
 黒澤明監督の映画『隠し砦の三悪人』(1958年、東宝、139分、白黒)を映像文化ライブラリーで観る。
 御家再興の軍用金を持って、同盟国へ脱出を図る雪姫(上原美佐)、武将の真壁六郎太(三船敏郎)、百姓二人のコンビ(千秋実藤原釜足)の四人が、途中の町で百姓娘がひとり加わって五人で、敵の支配する中を突破する。
 ハラハラドキドキの娯楽時代劇。馬がワイドなスクリーンの中を駆ける。まるで西部劇のようだ。
 田所(藤田進)という敵の武将と真壁六郎太との槍による決闘シーンがある。
 六郎太が勝つのだが、命はとらないでそのまま六郎太は去って行く。
 後に六郎太らが捕まった時に、最後の絶対絶命のシーンに田所が首実検にやって来る。
 「裏切り、御免!」と田所が言い放って六郎太らと軍用金を積んだ馬を、同盟国のほうへ放すのだった。
 八月八日は植草甚一の誕生日。生誕百年。セロニアス・モンクを聴きながら『植草甚一ジャズ・エッセイ1』(河出文庫)から「セロニアス・モンクをめぐるエピソード」を読んだ。

 モダン・ジャズが好きな人は、見わたしたところ、本がすきな若い人たちが多いようだ。それも新しい翻訳小説に興味をもっているのは、そういった作品があたえる感覚的なものがジャズから受ける感覚的なものと、どこかで共通点があるからだろう。  13ページ