「鼓ケ滝」

 夜、NHKラジオの番組「今夜も大入り!渋谷・極楽亭」で、三遊亭王楽の落語「鼓ケ滝」(つづみがたき)を聴く。
 鼓ケ滝という名勝の滝で、北面の武士西行)が歌を詠んだ。滝の前で昼寝をする。夢の中で爺さんと婆さんと娘が現れる。その詠んだ歌の手直しを、爺さんや婆さんや娘からされる。
 「しかし旅のお方、あとひとつ手直しをすれば、天下無二の名歌になりまするぞ。」
「なに? わたしの詠んだこの歌にご老体が手直しを、ご老体が・・・面白い。歌心がおありとみえる。ならば手直しをつけていただきましょう。」
 武士は素直に「手直しちょうだいつかまつりました。」と受け入れる。よい歌になりましたなぁ。
 夢から覚めると、木こりがやって来て、夢に現れた三人は和歌三神が手直ししてくれたに違いないと言う。
「えー、夢か?」
 仕舞いまで素直に歌に手直しを受け入れたのはおめえさま一人だけだ。立派な歌詠みになられるだよ。この滝は鼓(つづみ)だ。決して撥(ばち)は当たらねえだよ。
 正月らしいめでたい噺(はなし)であった。
 ゆったり落ち着いた噺で味わい深い。