黄砂と春霞

白梅

 黄砂が飛来する。空が霞み春先のような気温である。公園の白梅が開花し始めた。梅の木の周辺には香りが漂っている。
 そばに寄ると香りに包まれる。
 通りすがりの人が梅の木にやって来て、花と匂いに立ちつくしていた。
 『長新太のチチンプイプイ旅行』(平凡社)を開いた。全日空の機内誌「翼の王国」の1994年四月から2001年一月まで掲載された、「チチンプイプイ旅行」のナンセンス・マンガと文を収録している。付録にB3サイズの用紙が折りたたまれていて、開くと長さんのイラストが目に飛び込んで来た。
 あとがきに、

 灰色の雲海の中を、飛行機が飛んでいる。この飛行機は観光会社のガイドには載っていない夢幻の国へ向かっている。乗客はみんな生きているのか死んでいるのかわからない。この飛行機だってどこの国のものやらわからない。
 物事は見えたとおりではない。それを確めるための旅である。  191ページ

長新太のチチンプイプイ旅行