ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』

 2月14日から一週間限定の上映であるビクトル・エリセ監督の映画、『ミツバチのささやき』(1973年、スペイン、99分、カラー)をサロンシネマ2で観る。
 最終上映時間で観客は35人ほど。ニュープリント版。
 1940年のスペインの片田舎の村が舞台。
 冒頭、移動映画のトラックが村へやって来るところから始まる。
 村の公民館で「フランケンシュタイン」の映画を午後5時から上映する。子供たちや大人が集まって映画を観ている。
 養蜂場で養蜂箱を点検している男 (フェルナンド)が、その日の作業を終えて映画を上映している公民館の前を通って家へ帰って来る。
 昼食を食べに戻らないで養蜂箱の点検をつづけていたためお腹が空いている。それで、お手伝いさんに食事をしたいと言う。
 自転車で駅まで行き、手紙を汽車に投函する女(テレサ)が登場する。自転車で家へ戻って来る。
 フェルナンドの部屋に外から「フランケンシュタイン」の映画のセリフがもれて聞こえて来る。
 フェルナンドの妻がテレサで、二人の子供にアナとイサベルの姉妹がいる。アナは6歳、姉と二人で「フランケンシュタイン」の映画を観ている。
 映画を観終わって、二人の姉妹は夜その映画に強い影響を受けて、森の中に妖精がいるという目には見えないものの実在をめぐって考えをめぐらすのだった。
 ある日、鉄道の列車から兵士がころがり落ちる。逃亡兵らしい。
 精霊が現われるという畑のなかの廃屋の建物と井戸を覗きに二人の姉妹は学校帰りに寄り道していたが、アナは廃屋にその男が居るのを発見してしまう。
 アナはその兵士が足を痛めて歩けないので、リンゴと父フェルナンドのコートを男に持って行って与える。
 ところが、その男は夜の間に発見されて銃撃戦の末に射殺されてしまう。
 それを知ったアナは廃屋へ出かけ、その衝撃でふらふらと行方不明になってしまう。
 心に深い傷を負ったアナの心模様が静謐な映像と音楽とともに淡々と描かれている。アナが映画のフランケンシュタインを見る瞳と驚きの表情などとても印象的である。
 学校の先生が授業でスペイン語で言う、精霊とか沈黙とかいうセリフが耳に残った。目に見えないものに大事なものがある。とテレサだったか言っていた。
 「エンドマーク」2月号をもらう。それによると、

21世紀の映画を担う十人の一人、エリセの処女作にして代表作。六歳の少女アンナを通して40年代スペイン内戦の傷あとを描く本物の傑作!