「名作映画 川島雄三監督特集」から『洲崎パラダイス赤信号』(1956年、日活、81分、白黒)を映像文化ライブラリーで観る。観客は30人ほど。
新珠三千代、三橋達也、芦川いづみ、小沢昭一、轟夕起子が出演している。原作は芝木好子の小説『洲崎パラダイス』である。
冒頭、蔦枝(新珠三千代)と義治(三橋達也)の二人が橋の上で、お金もなくなり途方に暮れている。
蔦枝と義治の二人はバスに飛び乗って、蔦枝が昔住んでいたことのある町で下車して、お徳(轟夕起子)がやっている飲み屋が求人している張り紙を見て、店に住み込みで働き始める。
義治は近くの蕎麦屋で働き始めた。
蕎麦屋にはお玉(芦川いづみ)という娘がいて、店の出前持ちの若者を小沢昭一が演じている。芦川いづみのお玉が素晴らしく可愛い。
飲み屋は洲崎パラダイスの入り口に店をかまえていて、ボート屋も兼業している。
お徳には小さな男の子が二人いて女手で育てている。
義治への金銭的な不甲斐なさから、店へ来た神田の電気屋の落合(河津清三郎)という男の元へ身を寄せた蔦枝だったが、その落合にも失望して再び義治の元へ帰って来る。
義治は、落合の所へ去った蔦枝を思って居場所を求めて雨の中をさ迷い、晴れて暑い中を、神田の電気街をさ迷っているうちに空腹で倒れてしまう。
お徳の行方不明の夫が突然戻って来て、お徳は至福の時を過ごすのだが、ある日その夫が追ってきた女によって殺されてしまうのだった。
つかの間の幸せから突き落とされたお徳。
お徳の殺された夫は玩具の刀を二人の子供に買ってやっていた。
冒頭の橋の上と最後の橋の上でのシーン、蔦枝と義治の二人が川を見つめている。
無常の川の流れ、川に子供の刀が流れていく。橋から駆けて行ってバスに二人が乗り込んで行くシーン、徐々に高い位置へと移動撮影の俯瞰が見せる市街地のシーンが素晴らしい。
町から去って行く二人の行方に微かな希望が見えるような気がした。
映画を見終わった後、福岡からのYさんと西条からの某さんと、川島雄三の映画をめぐって雑談。お徳の店に求人の張り紙を見て訪れた若い女を演じていたのは、新珠三千代の実の妹で桂典子という女優だそうだ。
「2月プログラム」に、
川島監督が、「幕末太陽傳」よりも好きだという作品。行くあてのない蔦枝と義治は、遊郭のある洲崎にたどり着く。生活の立て直しは難しく、焦りと諦めが交錯し、2人の気持ちはすれ違う。離れようとしても離れられない男と女の姿を描いた佳作。