西川美和監督の映画『ディア・ドクター』

「ディア・ドクター」のチラシ

 夜明け(といっても雷雨で暗い)前に雷鳴が聞こえた。梅雨前線が南から北へと通過した。
 通過した後の停滞で一日中降ったり止んだりの梅雨空である。
 夕方、雨も止んでいた。飲み物と食べ物などを買ってシネツイン本通りへ急ぐ。
 館内の壁に貼ってある『ディア・ドクター』のポスターの横に、6月18日の日付の入った西川美和監督のサイン色紙が展示されていた。当日ここで会見があったようだ。
 観客が多い。席について映画の始まるまでの時間に食べ物や飲み物を口に運ぶ音と話し声がする。
 「エンドマーク」6月号をもらった。
 支配人・住岡正明さんの『ディア・ドクター』評などが載っている。 
 長い予告編のあと、西川美和監督の最新作『ディア・ドクター』が始まった。
 映画は冒頭からグイグイと人口千五百人の村の診療所の医師の失踪事件に引き込んで行く。
 結末まで、一瞬も息の抜けない映画。原作・脚本・監督と一人で三役を練りに練った切れ味のいい監督のセンスが光る。主演の笑福亭鶴瓶、そして余貴美子八千草薫瑛太香川照之らが好演。
 遠回りを、遠回りをしたっていいのさぁ。寄り道を、寄り道をしても花は咲いているのさぁ。の歌声が耳に残る。
 帰りは雨を覚悟していたのだが、拍子抜けする。
 通りは傘なしで人々が歩いているのだった。