「アジア映画の巨匠たち」という特集が12日から映像文化ライブラリーで始まっている。
13日のグル・ダット監督の映画『紙の花』(1959年、インド、148分、白黒)を観た。観客は15人ほど。
インド初のシネマ・スコープ作品である。映画館やパーティー会場や映画撮影所の群集の動きが移動撮影に伴って迫力がある。
ナスリーン・ムンニー・カビール監督の『グル・ダットを探して』(1989年)で『紙の花』の一部分を、昨年の7月に「特集・映画に捧げるオマージュ」で見たのだった。
1964年の10月に39歳で自殺したグル・ダット監督の1959年の映画である。
『グル・ダットを探して』で、グル・ダット監督の生い立ちや作品のアンソロジー的な映像が印象的だった。
この『紙の花』は、グル・ダット監督自身が主演している。
冒頭、一人の男(監督)が、映画撮影所への入り口へそろりそろりと歩いて来るシーンから始まる。
妻子のいる映画監督が、自分の撮る映画の主演の女優に恋する自伝的なメロドラマである。
その撮った映画が不振で、映画会社に損害を与えてしまう。妻子とも別れて暮らしている。
女優との仲も引き裂かれ、映画業界から追放される。
かつての栄華から一転して落ちぶれてしまう。
別荘なども売り払ってしまう。飲んだくれで身を持ち崩して行くのだった。
最後は、撮影所の監督の座る椅子に座ったまま息を引き取る場面で映画は終わる。
冒頭と、終わりに次のようなナレーションが入る。
世のつながりは、うつろいゆくもの
この世に何を求めようというのか
すべてはかなく
おわるもの