『エッセネ派』

フレデリック・ワイズマン

 10月8日が二十四節気のひとつ寒露だった。
 この頃になると、北の地では初氷がみられるようになるから寒露というらしい。
 今日は快晴で、風が北から強く吹く。遠くの山がくっきりと眺められる。
 夕方、川を渡っていると、魚が水面に飛び出していた。
 ぴょーんと50センチほどジャンプするといったん潜り、すぐさま30センチほど水面上へ飛び上がって来て、また潜り今度は10センチほど飛び上がって水面へ消えた。
 そうした光景が、川面(かわも)にあちこちで見られた。

 「フレデリック・ワイズマン特集」が10月7日から12日まで映像文化ライブラリーで上映されている。
 昨日は、『チチカット・フォーリーズ』(Titicut Follies)(1967年、84分、カラー)を観に寄った。マサチューセッツ州の州立刑務所マサチューセッツ矯正院の収容者の日常を追ったドキュメンタリーである。

 今日は、ワイズマン監督の『エッセネ派』(Essene)(1972年、89分、カラー)を観る。観客は15人ほど。
 ベネディクト会の修道院の日常生活を克明に追って行く。エッセネ派という宗教組織に入ることになった修道士の一人ひとりの抱え込んでいる日々の思いが吐露されてゆく。修道女もいる。
 ドキュメンタリー映画といえるだろう。
 修道僧の朝礼の場面から始まり、終わりも朝礼の場面で終わる。
 広い畑でのトラクターを使った乾し草の収穫作業、食事の様子、信仰の問題での議論、そして祈り、組織としての規則や同僚同士の不仲をめぐる議論。
 ニューヨークの大都会の生活に馴染めず、修道院に入ったが、孤独の意識に悩む一人の修道士、その悩みを告白した後、聴いた同僚が癒しの祈りの儀式をする。
 葬儀で埋葬の儀式、賛美歌の歌唱。
 8年間の同僚の訴えに対する修道院院長の優柔不断さの人間味に微笑む。
 朝礼の時だろうか、一人の修道士が各自のお祈りを言う場面で、広島の原爆犠牲者の方へお祈りをしたい、という発言があった。
 オバマ大統領が、今日のニュースでノーベル平和賞を受賞したという。
 それと、気がついたのだが、フレデリック・ワイズマンは1930年生まれだった。
 帰り道、快晴の南の夜空に木星がひときわ明るく輝いていた。北よりの風が冷たかった。