出前自然史博物館

ツキノワグマ

 知人から案内状をもらっていた、一日だけの出前自然史博物館を観に訪れる。
 化石、ゴキブリ模型、昆虫、植物標本、動物の頭骨、アンモナイト、埋没林の輪切り、黒曜石、花崗岩、鳥類と哺乳類などの動物標本が展示されていた。
 庄原化石集談会からのショウバラクジラの骨格化石が目を引く。クジラの発見された地層の写真や説明文がある。
 展示場では、ショウバラクジラの骨格化石標本がもっとも大きい。
 大きな太い骨格化石だ。女の人が見物人に説明している声が聞こえて来る。それで、質問をしてみたら、クジラの骨格化石標本はレプリカだとの事だった。
 もう一つ、バウムクーヘンのような埋没林の輪切りの年輪模様がひときわ大きくて圧倒される。木が横倒しに置かれていて、人の背丈を超える年輪の直径だ。
 埋没林になる前に、この木が生きていた森を想像する。これらは、三瓶自然館から運び込まれたものだ。
 哺乳類の標本では、ツキノワグマ、キツネ、ニホンイタチなど、鳥類ではシベリア産のトキの標本を近くで見る。昆虫の標本がとてもきれいで見とれる。蝶、トンボなど。植物標本が少しあった。
 これらは倉敷市立自然史博物館からの出品。

 堀江敏幸の『正弦曲線』(中央公論新社)から「目的を持たない意志」を読む。面白かった。 
 冒頭、《仕事帰りに立ち寄った古本屋の店頭ワゴンで、無造作に積まれている一九六〇年代の『映画評論』の束を発見した。いちばん上の号の、表紙デザインに刷り込まれた横文字に反応して拾い上げてみると、一九六四年、つまり私が生まれた年の六月号である。》とはじまる文に、山川方夫の文章にマルグリット・デュラス論を見つけた後の展開が読ませる。
 そういえば、1964年のキネマ旬報ベストテン第1位のアンリ・コルピ監督の映画『かくも長き不在』の脚本をマルグリット・デュラスが書いているが、堀江さんにこの映画の感想を聞いてみたい気がするのだった。