「本はねころんで」で高杉一郎さんによる『エロシェンコ全集』についての話を興味深く読んでいます。
たまたま今読んでいる、なだいなだと小林司のお二人の対談本『20世紀とは何だったのか』1992年1月第1刷(朝日選書)に、エロシェンコと高杉一郎さんに言及されている箇所があったので参考までに引用してみます。
この対談本の帯に「挫折した三つの夢 共産主義・精神分析・エスペラントを通して、人間社会の過去・現在・未来について考える」とあります。
小林 二葉亭四迷が出した本で火がついた。それが日本の組織的なエスペラント運動の起源というか発祥なんですね。一時は燎原の火のようにインテリのあいだに広まって、「エスペラントを知らないやつは人間じゃない」みたいなことになったわけです。それが、若干下火になったものの、一九二三年の関東大震災までずっと続く。
エロシェンコが、一九一四年に日本に来たでしょう。臼井吉見の『安曇野』(あずみの)に出てきますが、新宿の中村屋がシンパになって、あそこで中村彝(つね)が描いたエロシェンコの肖像画が、今、国立近代美術館に入ってますね。あのエロシェンコがエスペランティストでね。
なだ あ、そうなの? 『盲目の詩人』と題されていたっけね。あの絵は、昔、中村屋で見たような気がする。 69〜70ページ
高杉一郎さんについては以下の箇所に、
なだ そう、マッサージというよりは日本式あんま術を勉強した。それが役に立ったとは! エロシェンコはいつまで生きていたの。
小林 どうにかスターリンの粛清にあわずに、一九五二年に死にました。ところが、鳴りをひそめていたから、そんな偉い文学者だなんてソ連じゃ誰も知らなくて、原稿なんかだいぶ残っていたのを、遺族がみんな燃しちゃったらしい。日本での評価が高いので、ようやく最近ソ連でも脚光を浴びて「エロシェンコ生誕百周年」というお祭りを一九九〇年の秋にやるぐらいにまでなった。日本で『エロシェンコ全集』(みすず書房)を編集した高杉一郎さんや、『エロシェンコの都市物語』(みすず書房)を出した藤井省三さんなどが招待を受けている。ペレストロイカということもあって、エロシェンコがソヴィエトで再評価されつつあるんだけど、彼は、東京と北京で、皮肉な運命をたどったのでした。 73〜74ページ
20世紀とは何だったのか―マルクス・フロイト・ザメンホフ (朝日選書)
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