『全線』

エイゼンシュテイン特集パンフレット

 今日は二十四節気のひとつ冬至だ。寒気団の南下で厳しい冷え込みがつづく。
 「エイゼンシュテイン特集」のうち、今日はセルゲイ・エイゼンシュテイン、グレゴリー・アレクサンドロフ共同監督の映画『全線』(1929年、90分、白黒、無声)が上映された。観客は15人ほど。
 見に行けなかった『戦艦ポチョムキン』と『十月』の解説チラシを、受付の人から分けてもらう。
 19日の『戦艦ポチョムキン』は、今回は演奏をピアノで吉清彩香という方がするのだったが、あいにく行けなかった。
 『全線』のタイトルは1931年に日本で公開されたときのタイトルで、原題は「古きものと新しきもの」という。
 農村の古くからの伝統と因習で暮らしている農民の生活を向上させるために、農業協同組合の結成を呼びかけるプロパガンダ映画で、幾多の困難の中から農民自身がお金を出し合って子牛を買い、牛乳分離器を買い、種牛を増やし、草刈りを多くの人出に頼っていたのを、馬や牛に代わってトラックターを買い、機械化によって生活を向上させるという目標を一歩一歩実現して行こうというメッセージが込められた映画だった。
 ラストにレーニンの教訓的な言葉が掲げられる。
 牛乳の遠心分離器の映像でもモンタージュ技法が駆使されて印象的だ。ラストの何処までもつづく穀倉地帯の平原の空に、巨大な牛の映像が突如として現われるシーンも。この巨大な牛が空に現われるシーンがエイゼンシュテイン特集のパンフレットにも使われている。