昨年刊行された『柳田泉の文学遺産』(右文書院)が三冊出ている。 第一巻は、柳田の「自伝的回想」と「明治文学の研究」がまとめられている。黒岩比佐子さんの解説の結びに、うなずくところがあった。
堅苦しく「学問」をするというのではなく、調べて発見する喜びを味わい、何よりも自分が楽しむことが大事だ――。柳田泉は、そのことを一番伝えたかったのではなかろうか。(解説より)
第二巻は解説・池内紀。『柳田泉の文学遺産 第二巻』には幸田露伴についての作家論、作品論が多い。
第三巻は解説・坪内祐三。この巻にある「露伴の死――十七年前の思い出」という文は、露伴が臨終になったときに幸田文さんから連絡があり駆けつけた柳田泉の回想記である。
柳田泉は、今で言えば、熱心な幸田露伴ファンだった。
柳田泉は幸田家に足しげく通って露伴に直接聞いて多く書き残した。
露伴の漢学、仙道、仏教への素養を述べている。
このうち仙道というのは馴染みのない言葉だが、『大辞泉』によると《中国の道教や神仙思想の中で、仙人の道術や、不老不死に至る道。》とある。
幸田文の小説を映画化した市川崑監督の『おとうと』に登場する小説家の父親(森雅之)を思い浮かべながら、「露伴の死――十七年前の思い出」などを読んでその余韻を味わう。
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