ブローティガンとソロー

ツバキ

 6日は二十四節気のひとつ啓蟄(けいちつ)であった。
 街路樹のツバキに花が咲いていた。ツバキの花が満開で見頃である。

 久しぶりに大型書店へ。先日から探していたリチャード・ブローティガン著『エドナ・ウェブスターへの贈り物』(ホーム社)を購入。
 副題が「故郷に残されていた未発表作品」。藤本和子訳。装幀・平野甲賀
 バートン・ワイスによる「覚書」を読むと、長年リチャード・ブローティガンの著作のみを蒐集してきたある友人から、1992年10月にかかってきた電話で話した内容が、エドナ・ウェブスターという女性が、ブローティガンが二十一歳でサンフランシスコへ旅立つ前にくれた、未発表作品の原稿などを売りに出したいという驚くべき電話だった。
 バートン・ワイスは翌日、エドナ・ウェブスターのいるユージーンへサンフランシスコ始発の飛行機に乗り、正午にはエドナの家に到着し、銀行の貸し金庫にはブローティガンの1950年代当時の写真、高校の卒業証書、エドナとその娘に宛てた手紙、そして未発表の原稿があった。
 もうひとつ、リチャード・ブローティガンと十九年間つきあいのあったキース・アボットによる「はしがき――若く、やるせなく、恋をして」の結びの言葉は《ブローティガンの過去の秘密のいくつかを明かしてくれるのがこの作品集である。》
 
 同じ書棚に、而立書房からヘンリー・ソロー著『コンコード川とメリマック川の一週間』が出ていた。
 訳者は山口晃氏。全訳のようだ。
 ところどころ見てみる。
 『コンコード川とメリマック川の一週間』については、『森の生活』の中で、ソローは、つぎのように書いている。
 

私がウォールデン湖へ行った目的は、そこで安あがりに暮らそうとか、贅沢に暮らそうとかいうのではなく、ある個人的な仕事をなるべくひとから邪魔されずにやりとげるためであった。わずかばかりの常識と、進取の気象と、実務能力に欠けるために、その仕事の達成をさまたげられるはめにでもなれば、情けないというよりは、ばかげているように思われたのである。  『森の生活(上)』
(飯田実訳・岩波文庫)41〜42ページ

 岩波文庫の訳注を確めると、「ある個人的な仕事」とは、《処女作『コンコード川とメリマック川の一週間』(一八四九)の執筆。》とある。

コンコード川とメリマック川の一週間

コンコード川とメリマック川の一週間