「湯川成一の美しい本たち」2

 午前4時過ぎに目覚める。ラジオ深夜便の「こころの時代」で「湯川成一の美しい本たち」と題したインタビュー番組を聴いた。少し寝過ごしたが、スイッチを入れると加藤一雄さんの湯川本について語られているところからだった。
 出演は画家・戸田勝久、元印刷会社勤務・福永幸弘の両氏である。
 関西発のラジオ深夜便は西橋正泰さんの担当で、西橋さんが両氏にインタビューしている。

 冒頭は、以下のところから聴けた。断片的だが、聞き取ったところをすこし書いてみる。

 戸田 《それで、まあ、加藤一雄さんは美術評論が御本職であったもんですから、小説は『無名の南画家』と『蘆刈』というのしかございません。それで、次に、そのじゃあ、もう『蘆刈』もやろうかということになって、『蘆刈』の場合は本文刷るのがページ数多くて大変ですし、その古書を買い集めまして、まあ装丁だけ湯川書房でやるという風なスタイルになりまして、そういう風にだからきわめて部数が少なくてですね、本文刷ってませんですから、古本屋さんで必死に集めまして、なかなか少ない部数なんです。13部ですね。》
 西橋 《13部!》(感嘆の声)
 戸田 《13冊古本を買い求めて、それをばらして、表紙を付け替えて装丁を全部やりかえたという・・・。》
 西橋 《あ、そうですか。そういうこともやるわけですか?》
 戸田 《そうですね。作り変え本ともいいますけれども・・・。はい。》
 西橋 《この表紙の絵は?》
 戸田 《絵は、私が肉筆で13枚全部違うのを描きまして、それが全部違います。》
 西橋 《へーぇ、あーっ、そうですかぁ。へぇー、これ墨ですかぁ?》
 戸田 《墨絵ですね。はい。ちょっと、まぁ、江戸時代の浦上玉堂という絵描きさんのことを、このとき湯川さん随分ご執心だったので、その人の絵の雰囲気で全部13枚違うのを描きまして・・・。》
 西橋 《はぁ、そうですか。この、描いてある表紙のこの材質はなんですか?》
 戸田 《あー、和紙です。はい。それを本に貼ってあるわけですね。はい。》
 西橋 《あー、なるほど。金色の、あの落款みたいのがありますが、これは?》
 戸田 《これは私が普段使っている判子(はんこ)を、まぁ湯川さん、ここに金箔押しで・・・。墨を惜しむこと金のごとしという韻文なんですけども。はい。》
 西橋 《じゃ、これ戸田さんの落款で・・・。》
 戸田 《はい、そうです。私が彫った落款ですけども。はい。えー。その後に、『京都画壇周邊』ていう加藤一雄さん亡くなられてから出ました美術評論集がありまして、それも出版社からもうすでに出ているものを20部、古書になっているものですね集めまして、それも湯川さんが自分が満足いくように装丁を全部替えられまして、私が箱に絵を描かしていただきまして、それでまあ、加藤一雄さんのこの世に残されたものは一応すべて湯川書房から出したことになるんですよ。》