「湯川成一の美しい本たち」5

 ラジオ深夜便の「こころの時代」で、「湯川成一の美しい本たち」から、湯川書房湯川成一さんのエピソードを、聞き書きですが、つづけてすこし書いてみます。
 有元利夫さんや辻邦生さんの本を出したいといったときの湯川成一さんの言われたエピソードが語られました。 

 西橋 《福永さんは、湯川さんが、「あのなぁ、芸術というもんは毒にも薬にもなるんやぁ」っておっしゃいましたと書いてらっしゃいましたね。》
 福永 《そうですねぇ。もう、まぁ、あの時は有元利夫さんの絵を見てね、これはいいなぁと思ったんですけど。その目録をもらって見せたら、そう言われたんですね。だけど私は、そう言われても自分の直感がありますからねぇ。そのまま引き下がるしか仕方がなかったんですけど。》

 福永 《それから、いつだったか、辻邦生さんの本を出したい。*1ついては、お前があんだけ言うんだから有元利夫の絵を入れたい。是非とも有元利夫に手紙を書いて、作ってくれと、頼んでほしいと、言われたことがあるんですけどね。私はもうびっくりして尻込みしてとてもそんな手紙よう書きません、と言ったんですけど。
 それじゃぁ言われて、自分で交渉されたそうですけど。その頃有元さん病気、病付きだったらしいんですけど。その時に言われた言葉はね、「私はこれで、先生方の本を作ってきたと。人を動かすのは情熱だと。これしかないんだと、言ってはりましたね。あの、とにかく手紙を書く。これが一番最初だと言ってはりましたね。はい。》
 西橋 《たとえば、絵を有元利夫さんに描いてもらいたいと思ったら、有元利夫さんに一生懸命思いを伝える手紙を書くんだと。》
 福永 《はい。そう言われていましたね。》

 

*1:注記:辻邦生さんの本の書名はラジオでは、「りゅはい」と聞こえた。