『人情紙風船』と三村明のこと

人情紙風船

 10日、「生誕百年記念 山中貞雄監督特集」で、『人情紙風船』(1937年、P.C.L. 86分、白黒)を観ました。『河内山宗俊』は夜の雪の降るシーンと朝の雪の積もったシーンがいいですね。この撮影は町井晴美。
 『人情紙風船』は雨に始まり、雨に終わる。
 その雨を撮っているのがキャメラマンの三村明です。

 7月プログラムに、
 

山中貞雄の遺作。『髪結新三』の通称で知られる、河竹黙阿弥の歌舞伎『梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)』をもとに、江戸深川の長屋に暮らす人々のドラマを哀歓を込めて描く。広島出身の名キャメラマン三村明の映像が情感を添える。(フィルム提供/東宝株式会社)

 雨に始まり、雨に終わる。
 髪結新三(中村翫右衛門)が、土砂降りの雨で雨宿りしている白子屋の娘お駒(霧立のぼる)を通りかかって見かけたことから誘拐を思いつく。
 この雨のシーンは秀逸ですね。しめやかに降る雨、荒々しく降る雨・・・。
 雨が上がって晴れ間の見える空と雲、この対比的な描写。炎天下の金魚屋。 
 ラスト、水路の流れに乗って紙風船が流れてゆく。