『サバンナの記録』

サバンナの記録

 14日、羽仁進監督の映画『ブワナ・トシの歌』(1965年、東京映画、昭和映画、99分、カラー)が上映されたが、お盆で見逃したのだった。
 8月プログラムに、
 

学術調査隊の施設を建てるべく、アフリカに乗り込んだ日本人・片桐俊男。彼は言葉や生活習慣が異なるなかで、とまどいながらも、やがて土地の人々とも心を通わせていく。アフリカでロケを行い、渥美清扮する主人公の奮闘ぶりをユーモラスに描く。

 立秋を過ぎても、連日猛烈な暑さがつづくが、先月亡くなられた梅棹忠夫さんを偲び、『回想のモンゴル』や『サバンナの記録』を読んでいる。
 梅棹忠夫著『回想のモンゴル』は、ラクダに乗っての調査旅行などがあり、ラクダに乗るのは馬とは違う乗り方で意外なエピソードが面白い。馬とは随分違う。
 『回想のモンゴル』をひとまず休んで、アフリカの奥地、広大な草原のサバンナに住む狩猟民族たちの人生の記録といった面をもつ梅棹忠夫著『サバンナの記録』を読み継いでいる。
 この本の旧版は一九六五(昭和四十)年にでて、さいわい多数の読者に歓迎され、また一部は数種類の高校の教科書に収録されたりしたそうである。
 映画では片桐俊男という名前の渥美清扮する主人公というのは、梅棹忠夫著『サバンナの記録』によると、
 

カボコ基地の建設を指揮したのは、片寄俊秀(かたよせとしひで)君という若い建築技師だった。そして、建設労務者としてはたらいたのは、カボゴ岬の北側の、イラガラとカラゴの村からやってきたトングエ族の青年たちだった。俊秀青年は、トングエたちから、「ブワナ・トシ」(とし旦那)とよばれて、敬愛された。日ごろ、のんびりとした仕事ぶりになれたトングエたちには、この基地建設の仕事は、なかなかつらいものだったようだ。若くて、気合いの入ったブアナ・トシの指揮ぶりは、ずいぶんきびしいものに思われたにちがいない。しかし、かれらはよくはたらいた。
 建物は、一九六二年の春に完成した。落成式には、大酋長のルサガリーカも参列した。大ぜいのトングエたちがやってきた。建設を手つだった青年たちは、片寄君のために、「ブワナ・トシの歌」をつくって、みんなで合唱した。かれらは歌った。

  日本人がやってきた
  タンガニイカにやってきた
  そのなかにトシという男がいた
  ああ
  その男は若いけれど
  なんとうるさいやつなんだろう
  トシの仕事ときたら
  ああ
  なんとうるさい仕事なんだろう
  
 かれらは、親愛の情をこめて、その歌をうたった。
 片寄君は、日本へ帰って、アフリカでの経験を本に書いた。『ブアナ・トシの歌』(アサヒ・アドベンチャア・シリーズ、朝日新聞社刊)という本がそれである。  17〜19ページ