映画『UFO少年アブドラジャン』

 「アジア映画特集 日本から遠いアジアの国々」から、ズリフィカール・ムサコフ監督の映画『UFO少年アブドラジャン』(1992年、ウズベキスタン、88分、カラー)を観た。午前の部で観客は多い。
 パンフレットに、
 

ウズベキスタンのとある村で集会が開かれていた。UFO接近中の電報に半信半疑の村人たち。そんな中、初老の男が奇妙な円盤の墜落を目撃する。近づくと、そこには裸の少年が倒れていた。男は少年を助け出し家へ連れて帰る。やがて少年は次から次へと奇跡を起こして村人たちを喜ばすはずだったが・・・。

 冒頭、コルホーズの村で集会を開いている会場に、蜂が飛んで来る。議長のテーブルに接近して来る。議長は蜂を叩き落すのだった。
 冒頭のこのシーンが、後に重要な意味をもちはじめる。
 ウズベキスタンでは兵役の義務があるので初老の男の息子も兵役に行く。
 母親が息子が兵役に行くのを悲しむシーンがある。
 空から落ちて来た少年は、兵舎に寝ているその息子を、瞬間移動で村の家の前へ戻す。
 母親と会わせた後、兵舎の起床時間に間に合うように、その息子を兵舎のベッドへ瞬間移動させる。
 また鍬(くわ)にまたがって空を村人が飛ぶ。日照り続きの畑に雨を降らせる。
 コルホーズの議長だけは、鍬(くわ)で自分も空を飛ぼうとしても飛べない。なぜだと言って、少年に駄々をこねるのだが、少年は「いやだ」と言って断る。それは、映画冒頭の集会で議長が飛んで来た蜂を叩き落したことが理由らしい・・・。
 こういう奇跡を嗅ぎつけた警察・軍隊が出動する。戦車、戦闘機、ヘリコプターが続々と村を目指してやって来る。
 少年は、父親になってくれた初老の男が身を隠すようにしてくれるのだったが、世話になった父母に別れて生まれた空の彼方へと円盤に乗って去って行くのだった。
 初老の男とその妻が、少年が空の彼方へ円盤で戻って行くのを見送るラストのシーンは印象的だ。
 スティーヴン・スピルバーグの映画『E.T.』へのオマージュ(敬意)の手紙を朗読する声がしている中を・・・。
 ラストで、少年が円盤で空の彼方へ飛び去るシーンは、『竹取物語』の「かぐや姫」の昇天をふと思う。