映画『華麗なるアリバイ』

 アガサ・クリスティ生誕120年で、クリスティ原作の『ホロー荘の殺人』を映画化したパスカル・ボニゼール監督の映画『華麗なるアリバイ』(2008年、フランス、93分、カラー、ヴィスタ)を観た。原題はLe grand alibi。サロンシネマ2で。
 上院議員の大邸宅に招かれた客や親族らが週末にあつまり、総勢9名で食事をしたり、プールで泳いだり狩猟に出かけたりと過ごすのだが、精神科医のピエール(ランベール・ウィルソン)がプールで泳いだ後、何者かに殺されてしまう。
 冒頭、その精神科医の勤める病院の担当患者を、アラン・レネ監督の『ヒロシマ・モナムール』で主演したエマニュエル・リヴァが老女を演じていた。
 上院議員の妻エリアーヌはミュウ=ミュウが演じている。(ミュウ=ミュウといえば、『五月のミル』を思い出す。)
 ピエールの殺された現場に最初に駆けつけた妻のクレール(アンヌ・コンシニ)が疑われるが、持っていたピストルの口径が違うことがわかり疑いが晴れる。だが、第二の殺人が起こり、謎が深まる。彫刻家のエステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)と作家のフィリップ(マチュー・ドゥミ)とクレールとがエステルのアトリエで繰り広げるそのスリリングな(ぞくぞくっとする)展開が、これぞミステリー映画の醍醐味。
 ピエールが本当に愛していたのは、妻や愛人ではなく・・・。エマニュエル・リヴァが演じる脇役のような老女が隠れたキー・パーソン。皮肉な結末で見事。

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)