映画『野良犬』

野良犬

「生誕100年 黒澤明監督特集」が、映像文化ライブラリーで開催されている。
黒澤明監督の映画『野良犬』(1949年、新東宝映画芸術協会、122分、白黒)を観に寄る。夜の部で観客は30人ほど。
 冒頭、クレジットに撮影・中井朝一、脚本・黒澤明菊島隆三。助監督に本多猪四郎
 プログラムに、

新人の村上刑事が拳銃を盗まれ、その拳銃を使った事件が次々に起きる。戦後間もなくの時代色を濃厚に漂わせながら、村上刑事とベテランの佐藤刑事の必死の捜査を、スリリングに、またエネルギッシュに描く。

 冒頭、犬が舌を出しハァーハァーとあえぐシーンのクローズアップ。
 真夏の満員バスで、新人の村上刑事(三船敏郎)は拳銃のコルトを盗まれる。
 その後、盗まれた拳銃のコルトが使われた強盗殺人事件が続発する。
 捜査第三課のスリ係りのベテラン刑事(河村黎吉)から、バスの中で隣にいた女がスリの常習者であることを突き止めた。
 村上刑事(三船敏郎)とベテランの佐藤刑事(志村喬)とがコンビを組み、訊き込み捜査を開始するのだった。三船が復員兵姿でピストル・ブローカーの犯罪組織と接触しようと復興途上の戦後の街を彷徨するシーンに、当時の時代を感じさせるものがある。
 なんと、野球場で張り込んでいる時の試合が、巨人と南海の試合。「背番号16、川上」と、場内アナウンスの声が聞こえてくる。
 逮捕されたピストル・ブローカーの自供から、ピストルは犯人の遊佐(木村功)に渡っていた。
 三船の刑事が木村功の犯人を追跡し逮捕に到るエネルギッシュなアクション場面も印象に残る。
 善と悪といった追う刑事と追われる犯人の人生の対比を匂わせる教訓的なセリフもあるが、それほど気になることはなく楽しめた。
 脇役で、ピストル・ブローカーがヒモの千石規子や、刑事役の河村黎吉が好演している。