『食味風々録』を聴く



 街路樹の枝垂れ桜(シダレザクラ)が、咲き出した。
 青空に、淡紅色の桜の花弁(はなびら)が見事だ。 

バラ科の落葉高木。ウバヒガンの変種で枝先が垂れ下がるもの。三月上旬に淡紅白色の花を開く。紅色の花をつけるベニシダレなど品種も多い。糸桜。しだりざくら。  『大辞泉

 引用句は、「まさをなる空よりしだれざくらかな」(富安風生)。
 
 阿川弘之著『食味風々録』を聴いた。
 新潮社のCDで、タイトルは、「娘が読む 食味風々録」である。食味随筆の本を、阿川佐和子さんが朗読しているのだ。タイトルに偽りなし。
 収録されているのは、

 1、米の味・カレーの味 
 2、 
 3、食堂車の思い出 
 4、置土産 
 「米の味・カレーの味」は、老いての日々、家族の会話を聴いていて聞き間違いが増えてきた体験をまじえて語りながら、米の味・カレーの味をめぐる話だが、ユーモアのセンスが独特である。
 「鰻」は、文士仲間や女優(高峰秀子)と、食事を共にした料理屋での面白いエピソードが披露されている。文士仲間の食欲を観察した部分が笑える。
 「食堂車の思い出」は、学生時代に東京と広島を特急列車で毎年帰省する時に、食堂車で給仕する女の人との淡い交情を回想している。大学を半年繰り上げ卒業して、海軍に入隊するべく九州へ赴く途中に、また食堂車で再会する。印象深いエッセイです。
 『食味風々録』は、「しょくみふうふうろく」ではなく、「しょくみぶうぶうろく」と濁って発音していた。風々録とは、生活のやり方、流儀ということであろうか。