肩の力を抜くこと



 先日、週末の公園は花見客で賑(にぎ)わっていた。
 今日は朝から晴れて青空がどこまでも広がっている。
 清らかな明るさ。二十四節気のひとつ清明である。春分から十五日目である。
 夕方、公園の桜を見る。満開だった。週末まではソメイヨシノは見頃だろう。
 『波』4月号で、若島正の「青春の『V.』」、近藤一弥の「新しい伝記の形ーー『安部公房伝』」、阿部和重の連載第5回「幼少の帝国 成熟を拒否する日本人」を読む。
 「青春の『V.』」は、トマス・ピンチョンの『V.』を《京都の河原町通りに善書堂という小さな書店があって、その店の奥にペーパーバックを並べている棚があった。そこでいつもミステリやらSFやら現代小説を漁っていたわたしは、あるとき偶然に、バンタム版の『V.』を手にとったのである。》と始まる書評である。
 《のめりこみながらも、肩の力を抜くこと。ピンチョンのトレードマークともいえるこの姿勢を、わたしはよくわからないなりに本能的に感じ取った。》
 《もしかすると『V.』は、ピンチョンにしか書けない「青春の書」であるように、わたしにとっても奇妙な「青春の書」だったのかもしれない。》