児玉清さんと『悪い奴ほどよく眠る』

 俳優の児玉清さん死去をテレビニュースで知る。
 デビューした当時の映画で黒澤明監督の映画『悪い奴ほどよく眠る』に、新聞記者役で出演していると、この映画でのシーンを映していた。ああ、あの冒頭のシーンの記者の一人に児玉清さんが出演していたんだなぁ。ご冥福をお祈りいたします。
 1月、2月に、「生誕100年 黒澤明監督特集」があり、見に通っていた。
 2月の下旬、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年、東宝、138分、白黒)は上映された。

 プログラムに、

主人公・西幸一の父は、汚職事件の責任を負って自殺した。西は他人になりすまして汚職の元凶である人物に近づき復讐を試みる。しかし、悪の根源は西の手の届かないところにあった・・・。サスペンスと緊迫感あふれる演出で現代版『モンテ・クリスト伯』とも評された問題作。

 冒頭の西幸一(三船敏郎)と日本未利用土地開発公団副総裁・岩淵(森雅之)の娘・佳子(香川京子)との結婚の披露宴が始まり、豪華に政財界人の列席で行われようとしている。公団と建設会社との汚職を嗅ぎつけた新聞記者の一団が遠巻きに見つめている。
 そのなかの中心的な記者を三井弘次が、西の友人・板倉を加藤武が、公団の課長・白山を西村晃が演じている。
 加藤武が熱演。西村晃は鬼気迫る演技で印象的である。
 新聞記者の三井弘次は、物語の狂言まわし的な役どころが、渋く巧い。
 政界、財界、官僚の利権のからんだ事業をめぐって自殺をした父を持つ西(三船敏郎)の父を自殺に追い込んだ「悪」への復讐譚である。
 冒頭の華やかな披露宴から、映画に引き込ませる演出が見事だ。
 ラストまで目が離せない緊迫感ある筋の展開。
 見どころの多い映画である。