塩さばと羊羹

 昨夜のNHKラジオ深夜便は、迎康子さんの担当日。
 ミッドナイトトークが「忘れられない出会い」と題してロバート・キャンベル氏が出演していた。
子供の頃に、父祖の地アイルランドへお祖母ちゃんの四十年ぶりの里帰りに同行して、初めてアイルランドの地で親戚の人々に出会った農家体験。
 日本に留学していた時に、福岡で九年間、筥崎宮(はこざきぐう)の参道の前に住んでいた。
 おばさんが一人で経営している食堂で塩さば定食を食べていた。
 五六人で一杯になる店なんですが、お金のないときに出世払いということでよくしてもらった忘れられない出会い。
 親しくなった出会い、高校生の時の国語のルイス先生との出会い、教師で、ぐれかかっていたキャンベル氏を真剣に文学へ興味を持たせてくれるように、上手く導いてくれた。
 ルイス先生は雑誌に短編小説を発表していた人で、私の中にそういうものへの感受性があると見抜いていたのではないかと思えるんですよね。


 梅雨明け宣言が出る。一昨日からの梅雨空が明ける。
 
 姜尚美著『あんこの本』(京阪神エルマガジン社)に、「あんこの栞」というあずき・あんこをめぐる雑学がある。
 雑学のひとつに、「あんこを書いた作家たち」で、夏目漱石は羊羹好き、「しるこ」は芥川龍之介
 森鴎外は饅頭茶漬け、といった作品からの引用エピソードが興味深かった。

 菓子皿のなかを見ると、立派な羊羹が並んでいる。余は凡ての菓子のうちで尤も羊羹が好だ。別段食いたくはないが、あの肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。ことに青味を帯びた煉上げ方は、玉と蝋石の雑種のようで、甚だ見て心持ちがいい。のみならず青磁の皿に盛られた青い煉羊羹は、青磁のなかから今生れたようにつやつやして、思わず手を出して撫でて見たくなる。  『草枕

あんこの本 何度でも食べたい

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